シェアリング経済の先頭に立つAirbnbの「幸福なオフィス」へ
2016/04/20 Airbnb大家の会
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米国の求人サイト発表の働きやすい会社ランキングで第1位に輝いたAirbnb。その社員たちは空間を“シェア”することで、自由な働きかたを体現していた。
薄暗いエントランスを抜けると、5階まで吹き抜けの開放的なアトリウムが広がっていた。ジグザグに緑化された壁面を辿って視線を上へ向けると、ガラス張りの屋根からは柔らかい光が降り注いでいる。ちょうど昼どきに訪れたこともあって、ランチ休憩をとる人たちの楽しげな声が響くそこは、ホテルのラウンジのようだった。
エレベーターに乗って3階の受付に向かうと、アンティーク調の家具と木製の小さな立て看板がお出迎え。
「ようこそ。チェックインをどうぞ」
新しい形の旅を手掛けるAirbnb(エアビーアンドビー)らしい演出に、思わず口元がゆるむ。
広報の担当者に連れられて社内を歩くと、社員たちが思い思いの場所で仕事をしていることに驚かされる。典型的なオフィスのような空間でスタンディングデスクに向かう人もいれば、カフェのテラス席のような場所で打ち合わせをしている人もいる。社内のあちこちにあるソファは、ノートPCを広げた人でほとんど満席だ。
サンフランシスコやシリコンバレーの企業だと、こうした光景を見るのも珍しくはない。だが、空間がこれほど有効に活用されているケースは稀だろう。それもそのはず、ここで働く社員のほとんどは、自分のデスクを持っていないのだという。同社で社内環境チームを率いるアーロン・ハーヴェイはその意図をこう説明する。
「オフィスのデザインを考えるときは、できるだけ社内文化を表現した空間を作ろうと心がけています。だから、旅行や冒険がなぜワクワクするのかが感じられたり、空間をシェアする感覚を味わえたりするようにしているんです」
各自が専有スペースを持たないことで生まれた“余白”には、さまざまな種類の空間を設けることが可能になる。それは同時に、働く人に自由なワークスタイルを許容することにもつながっている。
「ここでは立って働くことも、寝転がって働くこともできます。騒がしくしても大丈夫だし、静かな場所で集中することもできます。こうした自由がきくのも、私たちがオフィスの空間をシェアしているからなんです」
社内環境チームを率いるアーロン・ハーヴェイ
こうしたアイディアはデザイナーのひらめきによって生まれたわけではない。ハーヴェイによれば、社員たちが働く様子を観察した結果として導き出されたのだという。
彼はもともと内装設計の仕事をしており、Airbnbはクライアントの一つだった。あるとき、ポートランド支社のオフィス設計を依頼され、社員のデザイナーとして内部から関わったほうがよりよいデザインができると直訴。14年4月に社内環境チームを立ち上げた。
ハーヴェイはまず、社員がどのように働いているかを調べるところから始めた。すると「空席のデスク」がたくさんあることに気づいた。多くの社員がノートPCを持って、ソファや自分の好きな場所に移動して仕事をしていたのだ。各自にデスクは与えられていたが、有効に活用されているとは言い難かった。
そこで社員ひとりひとりに与えるのは「必要最低限の場所」だけにしようと考えた。そして空いたスペースに、ソファや高さのあるテーブル、大型スクリーンなどを配置したのだ。
「大きな挑戦でしたが、誰も『自分のデスクが欲しい』とは言い出しませんでした。それどころか、『テーブルのおかげでみんなが集まりやすくなった』、『大きなスクリーンがあって重宝している』といったポジティブな変化を口にしたんです。デザインがワークスタイルに影響を与えた好例だと思います」