民泊ビジネスを始める前に知っておきたい「減価償却」とは〜民泊の教科書
2016/07/27 Airbnb大家の会
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「減価償却は節税効果があるってよく聞くけど、減価償却って何なの?」と思われている人も多いのではないでしょうか。
「時間の経過で下がる価値」といわれてもピンとこない人もいらっしゃると思います。
物件を購入して民泊ビジネスを始める場合、この「減価償却」の意味をしっかり理解しておく必要があります。
それでは、これから「減価償却」とは、どういったものなのかを分かりやすくご説明したいと思います。
減価償却とは
実際には赤字を翌年に持ち越したり、営業以外の利益が出たりするのですが、分かりやすくするために、そういった減価償却に関する以外の利益や費用、繰越は無しという前提で以下で例を挙げてご説明したいと思います。
民泊を始めるのに1億円で1棟アパートを購入したとします。
減価償却の仕組がなければ、その年の売上利益が1千万円だった場合、1億円を費用で計上して9千万円の赤字になります。
翌年も同じく売上利益が1千万円だった場合、費用が無いので利益が1千万円となり、1千万円に対して法人税又は所得税が課せられることになります。
購入したアパートは何十年も活用するために購入したものですので、購入した年だけ使用するわけではありません。
それなのに、購入した年に何十年も使うものの費用を一括で計上するのはおかしいのでは?という考えから減価償却という制度が生まれたのです。つまり、「減価償却」というのは費用を分割して計上することなのです。
どのように減価償却をするの?
それでは、何十年も活用するアパートの費用をどのように分割して計上していくのでしょうか?
減価償却を計算する上で「耐用年数」というものが重要になります。
購入金額を耐用年数に分割して費用として計上します。
例えば3000万円の物件で耐用年数20年の場合、20年かけて3000万円の経費を計上します。
減価償却費は定額法と定率法という計算方法で算出します。
耐用年数とは
アパートがいつまで使えるかというのは、その後の使用方法などで大きく変わってきますので、購入時点で建物が使えなくなるのがいつになるのかは分かりません。
また、同じアパートでも鉄筋と木造では耐久性が違います。
「私は50年で償却します」「私は15年で」と自由に決めることができると、経営者の都合の良いように節税が出来てしまいます。
そこで、税法で、建物の構造によって何年で分割するかを決めました。これを「耐用年数」と言います。
建物以外でも車や機械など10万円以上の資産は「償却資産」といって、それぞれ税法で耐用年数が決められています。
例えば新車の自動車は6年とされています。
しかし、新車を6年後に売ってもゼロになることは少ないですよね。
この耐用年数は税法で便宜上決めたものですので、この年数を経つと売買してもモノの価値がゼロになることではありません。会計上の価値が無くなると言うだけです。
ちなみに、土地に関しては価値が減るものではないと言う考えから「非償却資産」といって、減価償却は出来ませんのでご注意下さい。
以下、民泊ビジネスに関わる償却資産の耐用年数をご紹介します。
旅館用・ホテル用のもの
17
もの
旅館用・ホテル用のもの
15
旅館用・ホテル用のもの
・延面積で木造内装部分の面積が30%超
・その他のもの
31
39
旅館用・ホテル用のもの
36
4㎜を超えるもの
3㎜を超え、4㎜以下のもの
3㎜以下のもの旅館用・ホテル用のもの
4㎜を超えるもの
3㎜を超え、4㎜以下のもの
3㎜以下のもの
27
19
29
24
17
年数
その他のもの
8
その他のもの
15
その他の詳しい耐用年数に関しましては国税庁HP耐用年数をご参照下さい。
中古住宅の耐用年数
耐用年数を超した物件を購入した場合は、どうなるのでしょうか。
すでに減価償却が終わっているので、新たに減価償却は出来ないのでしょうか。
実は、中古住宅には中古住宅の計算方法があるのです。
法定耐用年数を全部経過した建物
耐用年数=法定耐用年数×0.2
法定耐用年数の一部を経過した建物
耐用年数=(法定耐用年数—経過年数)+経過年数×0.2
なぜ、減価償却が節税対策になるのか?
減価償却費は法人にとっても、個人事業主にとっても節税効果があります。
どのように節税効果があるのかをご説明したいと思います。
法人税の節税効果
先程ご説明しましたように、減価償却費は費用になりますので、例えば会社の年間利益が1000万円で減価償却が500万あった場合、利益は500万円になりますので、法人税も500万円の利益に対して支払うことになります。
建物は購入した時点でお金を支払っていますので、翌年以降は減価償却費として経費計上出来ますが、そのお金が実際に会社から出ていく訳ではありません。
会計上の費用として500万円引かれるだけですから、実際には1000万円の現金が手元に残るのですが、利益は500万円となって、利益500万円分の節税が出来ることになります。
所得税・住民税の節税効果
民泊ビジネスから得る事業所得や不動産投資で得る不動産所得は「総合課税」といって、対象となる所得を合算した合計金額に課税されます。(詳しくは『所得税・住民税』をご参照下さい)
この事業所得はかならずしもプラスになるとは限りません。
事業を行う上での費用が収入よりも大きくなった場合はマイナスになります。
ここで「減価償却」の節税効果が出るのです。
例えば、サラリーマンで給料をもらいながら副業で民泊ビジネスをする場合、会社からもらう給与(給与所得)と民泊ビジネスの事業所得を合算します。
減価償却費は費用ですので、民泊ビジネスの利益が200万円、減価償却費が300万円、給与が700万円だった場合、課税対象額は200万-300万+700万で600万円になります。
この場合、700万円の所得として源泉徴収されていた所得税から差額の100万円分の所得に対して掛けられていた所得税が還付されます。
逆に減価償却が無かった場合は課税対象所得が900万円になりますので、確定申告で追加の所得税を支払わなければなりません。
また、所得税の他に住民税も所得に対して課税されますので、住民税も所得税と同じように減価償却は節税効果が見込めます。
減価償却の注意点
このように減価償却はうまく活用すれば節税効果が期待出来るのですが、注意しなければいけない点もあります。
土地は減価償却出来ない
前述しましたように、土地は年を経ていくうちに劣化して価値が下がるようなものではないという考えから、減価償却は出来ません。
この土地が減価償却出来ないと言う点で、民泊用に空き家を購入するような場合は注意が必要です。
空き家になっているような家は家自体にほとんど価値がなく、購入価格の内で土地の価格がほとんどを占めているというケースがあります。
そうなると減価償却出来ると思っていたのに、減価償却出来る部分がほとんどなかったということになる可能性がありますので、建物部分の価格がどれくらいなのかのチェックを忘れないようにして下さい。
耐用年数しか償却出来ない
新築でも中古でも耐用年数は税法で決められています。
その耐用年数を忘れて、毎年300万円を費用として利益から減らせると勘違いしていると、減価償却が終わった翌年から一気に所得税があがる可能性があります。
意外と減価償却がおわってから納める所得税分のキャッシュがなくて慌てるということがありますので、この点は十分気をつけておいて下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
減価償却と聞いて「なんか難しそう」と感じられた人も、「なんだそんな簡単なことなのか」と思われたかもしれません。
ただ、仕組を知らずに費用として計上出来る有り難い制度と思っていると、注意点のところでご説明したような減価償却が終わった後に慌ててしまうようなことにもなりかねませんのでご注意下さい。
特に副業でされる場合は、給与所得と減価償却後の事業所得が合算された所得が一気に大きくなり、思いもよらないほど高額の所得税になることもありますので、特に注意が必要です。
編集部より:この記事は、民泊の教科書様の2016/3/10の投稿を転載させていただきました。