【レポート】GLOCOM主催、第1回シェアリングエコノミーのあり方に関する公開講座 〜MINPAKU.Biz
2018/10/23 Airbnb大家の会
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国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)は10月11日、旅や地域との関わり、シェアリングエコノミー(以下、シェアエコ)のあり方について考える公開講座を開催した。登壇したのは、GLOCOM主幹研究員であり准教授である庄司昌彦氏、元総務大臣、前岩手県知事であり、現野村総合研究所顧問である増田寛也氏、東京都議会議員の藤井あきら氏、渋谷区観光協会の事務局長とシェアリングエコノミー協会事務局を兼任する小池弘代氏だ。講座は「Local Gov Tech(ローカル・ガブ・テック)と旅・地域・シェアの未来を考える」をテーマに、登壇者による講演とパネルディスカッションが行われた。ローカル・ガブ・テックとは地方自治体の業務改革や地域の課題解決、新たな価値の創出などを目指して用いるテクノロジーを意味し、LocalとGov Techをかけ合わせた庄司氏による造語だ。今回は、全3回のうち1回目の開催となる同講義の内容を紹介する。
シェアリング・エコノミーとは
シェアエコは、家事代行やベビーシッター等の「スキルシェア」、民泊や駐車場、会議室等の「空間シェア」、ネットオークション等の「モノシェア」、車、自転車等の「移動手段」など多様化している。共通点は、おもに専用のアプリやサイトでサービスの提供者と利用者をマッチングし、双方が評価し合うことで、新たにサービスを利用するユーザーも個人の信用度を確認できるところだ。
シェアエコについて、庄司氏は、シニア層の中には「シェアエコは物欲がない若者の文化」だととらえる人もいるが、実際には「新しい価値観の多様化」としたうえで「一張羅をもつのではなく、複数のアイテムを手軽にそろえるファストファッションのイメージ」と独自の見解を示した。一方、藤井氏は、マイクロソフトに所属していた経験から「これまでペーパーレスだったので、政治家になり手続きが紙ばかりでおどろいた。シェアエコは物をすぐ捨てるのではなく、大事に長く使う、そんな価値観の変化もあるのでは」と話した。
また、小池氏は、自身が所属するシェアリングエコノミー協会で推進している「シェアリングシティ」について説明した。シェアリングシティとは、行政が民間の力を借りてシェアエコを推進する、オランダ・アムステルダム市発の取り組みだ。現在、国内でシェアエコシティを宣言している自治体は約40あり、宣言はしていないものの導入している自治体は約100あるという。また、渋谷区観光協会の事務所のとなりにはコワーキングスペースがあり、そこにはすでに荷物預かりサービスの「エクボクローク」が導入され、近日中にも貸し傘サービスの「iKasa(アイカサ)」が導入されるという。引き続き、渋谷区ではスクランブル交差点のほかにも観光資源をつくるための取り組みを進めると同時に、観光客を受け入れるインフラづくりの一環としてシェアエコサービスの導入が進められる。
シェアエコがシニア世代の生きがいへ
講座の中で、シェアエコと高齢者の関係性についての話題も上がった。増田氏は、訪日客の増加にともなう観光ニーズの変化について語った。近年、訪日客の間では東京と大阪を結ぶゴールデンルートだけではなく、古きよき日本の姿を見ることができる地方への関心が高まっている。しかし、地方ではバス会社やバス路線の減少、宿泊施設不足など、観光客をむかえるインフラが整っていない場合がほとんどだ。そこで、空き家を民泊として活用し、ライドシェアを導入することで、地域の高齢者が車で町へ出てスキルシェアに取り組み、民泊で観光客をもてなすことにより、地域活性化と個人の生きがいにつながると増田氏は続けた。
一方で、ライドシェアは日本国内では認められていない。その要因は国内でこれまで利用されていたサービスの事業者が抵抗感を示しているためだという。その点について増田氏は「利用者層がちがうので、両者は共存できる」と述べた。また、民泊については、地方の文化や出会い、コミュニティへの参加等、体験を重視する層は「民泊」、レベルの高い統一されたサービスを求める層は「ホテルや旅館」といった選択をすると例をあげ、サービス利用の棲み分けは可能だという立場を示した。
さらに、政府によると2016年のシェアエコの市場規模の試算は4,700億円から5,250億円に上るが、これから年ごとに爆発的な伸びを見せるだろうとの見解を述べた(参照:「シェアリング・エコノミー等新分野の経済活動の計測に関する 調査研究」 報告書)。
交通インフラについては庄司氏からも、現在の路線検索のみならず、手段を組み合わせて、ルート検索、予約・決済がアプリで完結できることで、効率的に移動に関するサービスを一体的、包括的に提供できるようになるという意見があがった。
社会資源としてデータをシェアする取り組み
庄司氏は「データ」を社会資源だとしたうえで、データ活用の観点からみたシェアエコの可能性について話した。
庄司氏は、まずシェアエコは、宿泊施設や乗り物、場所の定義を広げるものであり、より細かく識別(区別)する「Identify」、稼働状況を把握する「Monitor」、情報活用のため公開・シェアトライズする「Open/Share」、多様なニーズと提供者をマッチングする「Match」、双方向に評価する「Evaluate」といった観点からとらえることができると説明した。
海外の事例として、イギリス・ロンドン市では犯罪発生率など「現在」を把握できるデータを随時更新し、官(官庁)と民(民間)を問わず、誰もがリアルタイムで情報を入手できるオープンデータにしている。また、スペイン・バルセロナ市はデータとして把握できるよう都市中にセンサーをつけており、デンマーク・コペンハーゲン市は交通状況データを可視化し交通政策に役立てている。
日本においても2016年12月に、官・民がデータを使えるよう環境を整備する「官民データ活用推進基本法」が施行されたほか、企業や個人の行政手続きを原則として電子申請に統一する「デジタルファースト法案」が2018年6月議会に提出されている。
このように、国内外ではあらゆるデータをデジタルで管理する取り組みが進んでいる。さまざまな分野のデータを社会資源としてシェアすることで、新たな技術を創り出す土壌となり、経済活動や生活、文化などの質向上につながることが期待されている。
さらに、データの取り扱いがアナログであることのデメリットとして、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法を例にあげ「アナログな手続きが煩雑であるため、合法民泊が伸びなやみ、ヤミ民泊抑制にはつながりづらい」とし、海外ではAirbnbから自治体に登録できることについても言及した。データをデジタル化することの可能性については、米ニューヨーク発のコワーキングスペース「WeWork」を紹介した。
また庄司氏は、さまざまな社会集団に属する「複属」という考え方についても話し、一例として、電子居住制度「e-Residency」を導入し注目を集めているIT先進国のエストニアをあげた。エストニアでは、外国在住者が、外国から銀行口座開設や会社設立、納税等することができる。申請はオンラインででき、各国のエストニア大使館で受け取りが可能だ。同国では2025年までに、130万人の国民を1,000万人にすることを目標に掲げている。
日本においても、ふるさと納税やバーチャル村民、ふるさと住民票のように「複属」に関する取り組みは進んでいる。最後に庄司氏は「Local Gov Tech」が人と地域のかかわりを変え、旅、移動、交流、仕事、生活を変えていくと締めくくった。
編集後記
シェアエコは、家事代行や自転車シェアなど個人の身近な生活を便利にするだけにとどまらず、町おこしや交通渋滞解消、働き方改革など、社会に大きく影響する仕組みだ。いまや民泊×体験、民泊×ライドシェアなど、複数が掛け合わさったシェアエコサービスも増えている。特に民泊においては、それらのサービスの組み合わせにより、ゲストがさらに快適に滞在できるサービスが提供できるため、民泊運営にあたりシェアエコを学ぶことはホスピタリティ向上に大きく貢献するだろう。GLOCOMのシェアリングエコノミー講座は、今後継続して開催される予定だ。引き続き、進化を続けるシェアエコサービスの動向と専門家の意見に触れられる同講座、そしてシェアエコ市場の発展に注目したい。
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編集部より:この記事は MINPAKU.Biz 様の2018/10/18の投稿を転載させていただきました。