【前編】「新法施行後の民泊+マンスリーハイブリッド戦略」メトロレジデンス・Lester Kang氏〜MINPAKU.Biz
2018/01/26 Airbnb大家の会
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2014年にシンガポールで設立された、企業向けサービスアパートメントのプラットフォーム「MetroResidences」(以下、メトロレジデンス)。アジア経済のハブ拠点であるシンガポールで着実な成長を遂げた同社は、楽天からの資金調達を受けて2017年に日本に進出した。
来年には民泊新法が施行され、大きく民泊市場が花開こうとしている日本で、メトロレジデンスがどのような戦略を描き、どのような事業展開を考えているのか。MINPAKU.Biz編集部では、同社のファウンダー兼CEOのLester Kang氏にお話を伺った。
南カリフォルニア大学、航空宇宙工学卒業後、ビールメーカーAsia Pacific Breweries に入社。
その後、DBS銀行に5年間勤め、2013年にPandaBeds、アジアのホームシェアリングサイトを創立。
2014年にMetroResidences、長期出張用のサービスアパートメントサイトを開始、2017年に日本
オフィスの立ち上げのため来日。
インタビュー
メトロレジデンス設立から日本進出までの経緯
Q:メトロレジデンスを設立した経緯について教えてください。
メトロレジデンスはシンガポールで3年前に始まった会社で、ビジネス出張者と高品質なアパートメントをマッチングするプラットフォームを提供しています。
私はもともと航空宇宙工学を学んだ後にビールメーカーに入社して3年間マーケティングを担当し、その後は銀行でも5年ほど働きました。私は旅行が大好きだったので70ヶ国以上を回りましたが、旅行するときはいつも民泊を利用していました。そして2013年にPanda BedsというAirbnbのような民泊プラットフォームをオープンしたのですが、これはあまりうまくいきませんでした。
しかし、バケーションレンタルのビジネスをするなかで、多くの企業が従業員を出張させる際に民泊プラットフォームで貸し出されている部屋は使わせたくないと考えていることが分かりました。その主たる理由は部屋のクオリティです。
Panda Bedsが成長するにつれ、大企業のオフィスマネジャーは私たちに直接連絡してきました。「レスター、君のアパートメントが気に入ったから、価格も手ごろで品質の高い部屋を3部屋用意してほしい。滞在期間は2ヶ月だ」といった具合です。最初は物件オーナーと直接話しをしてほしいと思いましたが、ここでしっかりとサポートすればまたさらに多くの予約が獲得できると考え、対応しました。すると、彼らはまた数か月以内に予約を入れてくれました。
企業からのこのようなニーズがあることが分かり、ビジネス出張者向けの高品質な物件の掲載を進めていったところ、物件数と予約が毎月順調に増えていき、企業に対してより低価格で従業員を出張させられる部屋を提供できるようになりました。
また、そのなかで私たちは物件オーナー側のほうも短期の民泊ではなく3ヶ月程度の長期滞在をしてくれるビジネス出張者からの予約を望んでいることを知りました。なぜなら、彼らはアパートをとても丁寧に扱ってくれるからです。ビジネス出張者の場合ゲストは1人か2人がメインで、民泊とは違い1LDKに5人で泊まるといったこともありません。
そのため、私たちはビジネス出張者が使えるようなミドルからハイエンドだけに特化した高品質なアパートメントのプラットフォームを構築することを決めました。それまで物件オーナーにとっては通常の賃貸として2年間を貸し出すか、民泊プラットフォームで3日間を貸し出すかの選択肢しかなく、その中間がありませんでした。だからこそ、私たちは彼らを助けるプラットフォームを作ったのです。企業向けのサービスとして提供するためにPanda Bed というブランドも辞め、MetroResidencesとしてサービスを開始することにしました。
2016年1月には500 Startupsより資金調達ができたことで、シンガポールでは急速に成長することができました。現在、私たちはシンガポールと東京で合わせて約600のアパートメントを提供しており、著名なグローバル企業も含む800社以上の企業が私たちのサービスを利用しています。大企業の工場の近くといったビジネス出張者のニーズに合った場所にも数多くアパートメントを保有しています。また、日本でも既に70部屋以上を提供しています。
Q:シンガポールから日本に進出した理由は?
日本市場に進出した理由は主に3つあります。1つ目は、私たちは幸運なことに楽天から資金調達をすることができ、楽天のネットワークを活用して日本市場に進出する大きな足掛かりを得ることができたからです。
2つ目は民泊新法です。日本でももうすぐ民泊が合法化されますが、180日規制があることで残りの180日をマンスリーで運用するというニーズが出てきます。 この民泊規制も私たちにとってはよい機会となります。
そして3つ目はオリンピックです。日本ではオリンピックに向けてより多くのビジネス出張者が見込まれます。これら3つが、私たちが東京に進出した理由です。また、来年には香港にも進出予定です。
Q:民泊新法についてどう見ているか?
日本の政府は正しい方向に進んでいると考えています。他のアジア諸国を見てみても、日本の民泊規制は最も先進的で先見性があると思います。シンガポールや香港でも民泊は禁止されていますし、民泊が合法化されている欧州でも営業日数制限は90日などと短いのに対して、日本は180日ですからね。唯一望むことは、民泊の届出をよりシンプルなものにしてほしいという点です。
マンスリーと民泊のハイブリッド戦略
Q:民泊新法はチャンスのことだが、どのようなハイブリッド運用戦略があるか?
弊社では、物件を100%法人用のマンスリーとして運営した場合でも通常の賃貸よりは70%の収益アップ、マンスリー50%・民泊50%のハイブリッドで運用した場合では80%の収益アップが見込めると試算しています。
運用を始めるにあたってベストなケースは、10部屋あるマンションを持っていたとしたら、まずは5部屋を民泊で、残りの5部屋をマンスリーで貸し出してみるというやり方です。そうすることで、その物件の場合どちらのパフォーマンスがよいのかを比較することができます。
Q:民泊とマンスリーを同時に運用して収益を最大化するという方法は?
一つの部屋で民泊とマンスリーを同時にやるのは非常に難しいでしょう。例えば8月に2日間の予約が民泊で入った後に、マンスリーのプラットフォームから3ヶ月の予約が入ったとします。するとあなたは民泊の予約を断らなければいけません。ビジネス出張者のマンスリー予約は到着日の約2週間前に入るケースが多く、予約日と宿泊日がそれほど離れていません。そのため、私たちはオーナーに対しても民泊とマンスリーを同時に行うと必ずクラッシュするといつも伝えています。もし一つの部屋で民泊とマンスリーを両方やりたいのであれば、この月はマンスリー、この月は民泊、という形で決める必要があるでしょう。
Q:民泊とマンスリーのどちらを優先すべきか?
私たちはマンスリーを優先するのがベストな戦略だと考えています。2~3ヶ月ごとの予約をマンスリーでとり、隙間があれば民泊で埋めるという方法です。また、先ほどお伝えしたように10部屋あれば5つは100%民泊に、5つは100%マンスリーで運用して比較してみるというやり方もよいでしょう。そして、4月~10月までは民泊のためにブロックし、残りの月をマンスリーでやるという方法も考えられます。ただし、民泊とマンスリーを一つの物件で同時に運用することだけは避けるべきです。
編集部より:この記事は、MINPAKU.Biz 様の2017/8/15の投稿を転載させていただきました。